- パート2
- 食の魅力・学び・安全
- 日本橋会場
- 14:30開始
レポート
サプリも薬もいらない!? 見直そう! 日本の伝統食。
レポート
サプリも薬もいらない!? 見直そう! 日本の伝統食。
「健康」が人生最大の関心事である人は少なくないと思います。そして毎日、大量のサプリメントや健康食品を摂取している人もいることでしょう。一方で家庭の食事はどんどん簡単になってきています。「○○の素」を混ぜれば「はい、出来上がり」。確かにそれは文明の進化とも捉えられるわけですが、一方で伝統食材の持つ“力”を忘れてしまう結果になってしまいました。今回は日本の伝統食が持つポテンシャルについて考えてみたいと思います。
株式会社自遊人代表取締役
米を作り、宿も運営〜雑誌「自遊人」が目指すもの
「自遊人」は、食べ物とライフスタイルを紹介する雑誌で、2000年に創刊しました。編集部は新潟県の南魚沼にあります。なぜそんな場所にあるのかというと、我が社は雑誌創刊に続いて、2002年に食品の販売、具体的にはお米の販売を始め、そのために日本中のお米を試食し、その食べ比べをしているうちに、あることに気づいたからです。私達が美味しいと感じるお米の理由を生産者に尋ねると、その理由がそれぞれ矛盾するほどに違うのです。土壌が粘土質だからいいという人もいれば、砂っぽいから美味しくなるという人もいます。ある人は東向きで朝日が当たるからいいと言い、ある人は西向きで日没までたっぷり日を浴びるからいいという具合です。そこで米作りをきちんと勉強するために、日本一の米どころ・南魚沼にやってきました。数年前からは農業生産法人となって、米作りや農業体験を提供する活動を続けています。
また、それと並行して宿も経営しています。なぜそんなことまでするのかと、よく質問されます。現代の若者はバーチャルに生きている人が多く、インターネット上でほとんどの情報を得ることができます。すると、現地に行って食べなくても食べた気になれるし、行った気にもなれます。調べて、知った気になる、分かった気になる、それでOK。その先は面倒くさいからやらない、必要ないという流れです。これはどういうことかというと、例えば食べ物で言うと「サプリ化」です。人間に必要な栄養素はこれとこれだから、それをサプリメントで摂ればいいじゃないかという発想です。サプリを摂ったり、インターネットで調べることが悪いとはいいません。しかし、リアルな体験こそが重要で、実体験でしか得られないものがたくさんあるのです。その場として宿を始めました。
現代の食生活を疑ってみる
皆さんよくご存知のデータですが、日本人の死亡原因の推移を見ると、1947年には無かった悪性新生物が、54年に登場。急上昇を続けて85年に第一位になりました。一体なぜ悪性新生物、つまり癌は増えているのでしょうか。公害問題がひどかった時代は、大気汚染が一番体に悪く、癌の原因も煙草や大気汚染などの「悪い空気」が原因だと言われていました。しかし、現代に至るまでに空気の汚染度はもの凄い勢いで下がり、かつての公害社会のような状況はなくなりました。東京でも、それを実感される方は少なくないのではないでしょうか。
そこで消費構造の推移に関するデータに注目すると、ある事に気がつきます。食料消費の用途別支出において、生鮮食品の割合がどんどん減少しているのです。では何の項目が増加しているのでしょう。消費構造推移において食費にかける割合がこの50年間でどんどん下がっている中、外食という項目はピーク時の18.3%が17.8%に下がっただけで、微減に過ぎません。実質的な増加です。また、冷凍食品などの加工食品がうなぎ上りに上昇しています。人間が体に入れている物は空気と食べ物ですから、空気が良くなっているのであれば、食べ物が悪くなっている可能性が否定できません。そこで、一人当たりの食料でどんなものを食べているのかのデータを見てみると、昭和40年と今との比較で、野菜は2割減、お米は半減しています。一方、肉類・乳製品が共に約3倍増加しています。
今、死因の一位とされているのが肺がんです。肉食になると増えると言われている大腸がんや胃がんが減っている一方で、肺がんによる死亡者数は減りません。喫煙率はどんどん下がっていて、空気もきれいになっているのに肺がん患者の増加が止まらないのです。この問題の科学的な関連性については解明されていませんが、現代の食生活を見直す必要性を暗示しているように思われます。
見えないものに目を向ける習慣を
味噌の原材料の一つに脱脂加工大豆があります。脱脂加工大豆とは、脂を搾った後の大豆です。醸造に脂分は必要ありませんし、搾ったものの方が加工しやすいので、それを使うことには何ら問題が無いように思われます。唯一問題があるとすれば、脂を分離させる時にヘキサンという溶剤を使います。このヘキサンは猛毒です。もちろん、脱脂加工大豆を使った味噌や醤油からヘキサンが検出されるわけではありません。しかし、ヘキサンを加えることによって大豆の組成が何らかの変化を起こしている可能性はあるのです。このことについては、誰も検証していなければ、検証することは極めて難しいものです。なぜなら赤色何号など特定の添加物単体が危険だという話ではないからです。何かと何かを足した時に何が生まれるかということについては、これまで検証があまりされておらず、また、その科学的解明をしてもお金にならないばかりか、余計なことをするなと言われたりもしますし、実際に臨床結果を提出するには莫大な費用がかかるために、中々そういう研究はされません。
色々なものが「より早く、より安く」という掛け声の下で作られ、例えば、1kg500円程度で売っている味噌もあります。そもそも原材料の大豆が1kg500円であるはずないのに、それを醸造して流通させて、どうして1kg500円で売ることができるのでしょうか。そのためには、脱脂加工大豆を使うなり、中国産を使うなりということになるのです。天然醸造だとされている味噌の中にも、旨味成分のグルタミン酸ソーダを入れているものがあります。つまり、それを入れなければいけないということは、きちんと醸造されてないわけです。もし私達が、かつての日本がそうだったように、きちんと醸造されていた味噌を食べていたら、野菜をもっとたくさん食べていたらどうなっていたでしょうか。私達の周りには、私達には見えないもの、知らないこと、研究者が発表していないことがたくさんあります。そこにむしろ、人間にとって重要で、大切にしなければいけないことがあるのではないでしょうか。
構成・文:宮崎伸勝/写真:黒須一彦(エコロジーオンライン)