- パート2
- 食の魅力・学び・安全
- 日本橋会場
- 14:30開始
レポート
食育のすすめ
レポート
食育のすすめ
私は日頃から、食育には三本柱があると申し上げております。
1つ目は、「選食能力を身につける」という柱です。
2つ目は、食を通じた「躾」という柱です。
3つ目は、「地球規模で食料問題を考える」という柱です。
学校法人服部学園理事長・
服部栄養専門学校校長
食育1:良い食べ物を選んで食べる
食育には三つの柱があります。一つ目は、どんなものを食べれば安心安全かという「選食能力」。二つ目は衣食住の伝承、つまり共に食べることによって培われる「躾」。三つ目は「食糧問題」です。まずは、「選食能力」からお話ししていきましょう。
日本人は、世界でどれくらい塩を摂る国民だと思いますか?実は世界193ヶ国中、日本は第三位です。以前、秋田県で調査をし
たら塩分摂取量が36g/日でしたが、なんとWHOの規準は5g/日なんです。今、長寿第一位の都道府県は長野ですが、その理由は、県が30年前から減塩運動を始め、また、野菜摂取量が一位であることが大きく影響しています。塩分が多い生活をしていると高血圧症になり、腎臓がやられます。やがて透析が必要な体になってしまいますが、症状の悪いと一日二回の透析が必要になります。その場合の医療費は、保険に入っていなかった場合、年700万円。これが保険に入っていると年12万円で済みますが、残りは国庫負担です。皆さんの税金が、そこに回されていく訳です。今、日本の医療費は年間42兆円。これが1兆2千億円ずつ増えており、7年後には50兆円に達するとされています。これを聞いてどう思いますか?塩分は内臓疾患の癌の原因と言われていますし、ぜひ今日から減塩を心掛けて下さい。
次に女性の痩せ願望についてお話しします。思春期の女性が特に食べなくなってきたこと、これは大問題なんです。14年前、私はミスユニバースの審査員をやったことがありますが、その時にBMI(体重を身長の二乗で割った値)を審査基準にしました。BMIは22が標準、25以上が太り過ぎ、18.5以下が痩せ過ぎとされており、私は23.5くらいの人を対象に候補者を選びました。ところが、10年くらい前から18.5以下の人でないと優勝できなくなってきたのです。つまり、栄養失調の女性でないと優勝できないのです!そんな女性に憧れてしまうためか、先進国30ヶ国で20代女性のBMIの平均は23ですが、日本だけが18.7。栄養失調の一歩手前です。その結果、日本の女性に何が起きているか?卵巣の未発達です。20代ながら40〜50代の卵巣の状態という人が増えています。
このように、子供に或いは家族に何を食べさせるのか、何を食べさせないのかは、あなたがこの国をどうするのかというテーマに直結する問題なのだと覚えておいて下さい。
食育2:家族と共に食べる
衣食住の伝承とは、食卓の団欒、つまり共に食べることで育まれることです。「ちゃぶ台」は明治中頃に生まれた文化ですが、それ以来、家族が間近に顔を合わせて、箸の持ち方や、残さずにきちんと食べること、下品な食べ方をしないことなど、いちいち親が口出しをして躾をしていました。子供が変な食べ方を外でしていると「お里が知れる」なんて言葉があったように、人前で恥ずかしくない食べ方をできることが家の誇りでした。ところが今は、子供たちに食事の絵を描かせるとすぐ分かるのですが、一人で食事をしている子供が何と多いことでしょう!その結果、食べるものは調理済み加工食品が中心、食事のマナーも大変お粗末です。欧米では、下層階級以外は食事のマナーが大変重要視されます。品良く食事ができない人は獣だと言われますが、その意味では、最近の日本は獣だらけです!
そうならないために大切なことは、まず「三つ子の魂百まで」と言われるように、0歳から3歳までの習慣です。この期間に、親がきちんと抱きしめて優しい言葉をかけること、母乳をあげること、あまり早くから離乳食を与えないことなどが、将来の親子の絆に関わる感情形成、アレルギー体質に陥らないことなどに大きく影響することが分かってきました。必要ならばご両親との同居なども視野に入れ、できるだけ保育施設に依存せず家庭で食事を摂りながら育てるようにして下さい。
さらに3歳から8歳は、極力一緒に食事をして下さい。人間の小脳は8歳で完成します。小脳とは動物脳で、体の動きをコントロールするのが役目です。この時期に、例えば箸の使い方などを注意されればきちんとできるようになりますし、他にも色々なことを親から言われて、それが出来るようになっていく方がいいのです。ところが最近の親は優しくて、あまり口出しをしません。この放任主義の結果、何が起きているでしょう。不登校や凶悪犯罪です。私達が子供の頃は今ほど多かったでしょうか。食卓で注意されてこなかった結果、人の言うことが聞けず、切れやすい子になってしまうのです。小脳が動物脳、つまり獣のままの子供たちです。やがて、12歳で善悪を判断する大脳が完成しますが、その時に小脳が発達していないと、獣のままの人間が完成してしまうのです。食育とは子育て、つまり人間作りであることを決して忘れないで下さい。
食育3:“食糧問題”はあなたが生きるための問題
日本の食料自給率は、カロリーベースで39%です。残り61%のために、世界193ヶ国中70ヶ国が日本に輸出をしてくれています。この61%のうちアメリカが6割を占めている一方で、70ヶ国のうちの28ヶ国が「日本には売らない」と言い出しています。自国の人口が増えているためです。食糧は国の安全保障の根幹ですが、この状態で大丈夫なのでしょうか。日本は50年前、農業国でした。当時1434万人の農業従事者がいましたが、今は1/7に減って236万人です。平均年齢は現在68歳、10年後は78歳と言われています。そして、毎年20万人が仕事を辞めていっています。一方、新規参入者は年6万人。このまま行くと2030年には0人になってしまいます。今、マクドナルドの時給が850〜900円。農業の仕事を時給換算すると179円です。だから兼業農家が95%。要するに日本は、若者が農業に入るための仕組みづくりが絶対に必要なのです。TPP時代を迎えると、カロリーベースの自給率は19%になると言われています。第二次産業・第三次産業も協力してこの問題を解決ないと、私達は餓え死にしてしまいます。つまり、これもまた私達日本人全員が、この国をどうしていくのかを考えるべき立場にある、食育の重要な問題であることを肝に命じて下さい。
構成・文:宮崎伸勝/写真:黒須一彦(エコロジーオンライン)