制度修了生インタビュー

- CSOラーニング制度 -

CSOラーニング制度修了生インタビュー Vol.2

シンプルに、未来思考で。

CSOラーニング制度が紡いだ

キャリア

一般社団法人POW Japan 渉外/ 気候ネットワーク 理事

武井 七海さん

2020年度 特定非営利活動法人気候ネットワーク派遣

NPO法人新宿環境活動ネット 代表理事 武井 七海さん

関心分野を生かして、
POW JAPANでの活動へ

CSOラーニング制度での活動内容は?

CSOラーニング制度では気候ネットワークと「Protect Our Winters Japan(POW)」の2つで活動しました。大学時代の競技スキー部の経験から、気候ネットワークの方が多様なNGOとの繋がりをもとにPOWを紹介してくれました。
POWでは、まず組織の全体像を把握し、自分にできることを模索しました。当初はどのように貢献できるか悩みましたが、対話を重ねる中で学生の競技スキーヤーを対象にしたキャンペーンの案が浮かび、自分の経験を活かせる取組みと考えて即決しました。最終的には、白馬岩岳スノーフィールドの協力を得て、全国学生岩岳スキー大会でPOWのブースを出展しました。

青年海外協力隊の経験はCSOラーニング制度にどう繋がりましたか?

ベナンでの大雨や干ばつの経験から、気候変動が人々の生命に直結する重大な問題だと認識しました。温室効果ガスを排出する側と、被害を受ける側が異なる不条理を感じ、気候変動問題に取り組むきっかけとなりました。
帰国後、CSOラーニング制度に参加し、その思いを行動に移す機会を得ました。活動の中で他のインターン生から刺激を受け続けたことで、ベナンで感じた思いを絶やさずに、取り組みを続けられています。

インターン期間中、最も記憶に残っている出来事は?

POWの活動で長野県白馬村を訪れ、事務局の方の家に泊めていただいたことです。行く前は、何かお役に立てるだろうか、それ以上に話が合わなかったらどうしよう...という不安が大きかったのですが(笑)、皆さんが温かく迎えてくれました。一緒に食卓を囲んだり、犬や子どもたちと湖畔を散歩したことが今でも鮮明に思い出されます。修了後も事務局の皆さんの家に遊びに行ったり、一緒にスキーをしたり、楽しい時間を共有しています。

武井 七海さん

「完璧でなくても、
やりたいからやる」

インターン活動を通じて、成長を感じた点は?

「完璧でなければ行動してはいけない」という考えを手放し、シンプルな動機で活動することができるようになったことです。POWの活動を通じて、「この自然を残したいから気候変動に向けて行動する」という、シンプルな思いで活動する方々に出会いました。複雑に絡まった糸がスルスルとほどけていく感覚を得て、発信したり行動したりすることへのハードルが下がりました。同時に、自分にブレーキをかけている人の背中を今度は私が押したいと思いました。
2024年にPOWで行ったキャンペーンでは、アスリートや一般の滑り手も気候変動への危機感を表明してくれたり、国会議員に自分から連絡し気候変動の重要性を訴えてくれる方もいました。自分が守りたいものに対してアクションを起こす人が少しずつ増えてきていると感じています。

インターン中の課題と、それを克服した方法は?

インターン開始時は職員の方々と自身の知識の差を痛感しました。ただ活動をする中で、気候変動問題は気象科学やエネルギー政策、金融など幅広い分野と関わる複雑な課題であることを知り、すべてを理解している人はいないことが分かりました。それぞれの人が自分の得意分野で貢献していることに気がついたのです。私は農学部だったこともあり、「気候変動×農業」や「気候変動×食糧問題」など自分の専攻を活かした活動をしました。自分の強みを発揮できるポイントで貢献していこうと思えたことで、インターン活動がより楽しくなったと思います。

制度の繋がりで開けたキャリア

インターン後のキャリアへの影響は?

制度のおかげで、一貫して気候変動に関する仕事をすることができています。インターンを始める前は非営利セクターでの仕事など想像もしていませんでした。
具体的には、POWから紹介を受けたジャパン・クライメート・アライアンス(JCA)のClimate Fellows Programを経て、英国シンクタンクのInfluenceMapに就職することができました。
また、気候ネットワークではインターン後も勉強会などに参加し、昨年は会員としてCOP(国連気候変動枠組条約締約国会議)に参加させてもらいました。インターン時代の経験が基盤となり、より広く、より深い人間関係を築くとともに、専門的な知識を得る機会にも恵まれています。

現在の仕事で役立っていることは?

活動を客観的に振り返る習慣は、今のPOWでの仕事にも活かされていると思います。
制度では同期が集まる定例会が開催されるのですが、他の団体でインターンをしている仲間と情報交換することで、活動を客観的に見る機会が設けられていました。
気候変動問題を解決するために、できること、やりたいことは沢山ありますが、全てを実施することはできないので、優先順位をつける必要があります。制度の中で様々な団体の活動を知り、自分を客観的に捉える習慣がついたことで、現在のPOWでの活動においても、団体の強みを活かした効果的な取り組みができていると感じています。

これからCSOラーニング制度に参加する方へのアドバイスは?

これから制度に参加する方には自分が思い描く理想に向けて、沢山挑戦してほしいです。多くのNGOは、ほぼ解決が不可能だと思われる大きな課題に立ち向かっています。難しいことや、諦める理由は沢山ありますが、そんな中でも課題に対して「じゃあどうする?」と未来に向けて考えられるところに醍醐味があります。この思考方法を身につけたことで、私の生活全体がより充実したものになりました。正解のない難しい課題に挑戦しているのだから、どんな結果になっても失敗とは言えないのです。思い描いたものと異なる結果になっても、そこから「じゃあどうする?」と考えられるようになれば、失敗だと思っていたことも、良い財産になるのではないでしょうか。

略歴

武井 七海(たけい ななみ)

一般社団法人POW JAPAN 渉外/ 気候ネットワーク 理事

東京出身、香川県在住。大学時代にアルペンスキーに打ち込み、大学院ではPOW JAPAN初のインターン生として大学生へのPRを担う。気候変動シンクタンクでの勤務後、Degas株式会社では途上国で気候変動対策を進める仕組みであるカーボンファイナンス事業に携わる。現在はフリーランスで複数の事業を請け負いながら、POW JAPANで勤務。エネルギー政策や気候変動対策を促進するためのアドボカシー活動と、スキー場の脱炭素に向けた取組みを後押しする企業エンゲージメント活動を行っている。

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