CSOラーニング制度修了生インタビュー Vol.1
つながるバトン、
CSOラーニング制度で得た絆
NPO法人新宿環境活動ネット 代表理事
飯田 貴也さん
2012年度 NPO法人新宿環境活動ネット派遣
環境教育と
「本気のオトナたち」との出会い
インターン期間中の活動内容は?
2012年度に「新宿環境活動ネット(SEAN)」で8か月間インターン活動をしました。SEANが指定管理者として運営している社会教育施設「エコギャラリー新宿(新宿区立環境学習情報センター)」を拠点に、施設で開催するイベント・ワークショップや小・中学校における出前授業のサポートなど、こども向け環境教育事業に携わりました。特に印象に残っているのは、“環境”や“サステナビリティ”をテーマに取り組む沢山の“本気のオトナたち”に出会えたことです。学校の先生、ゲストティーチャーの企業・団体、保護者・地域の皆様など、多くの方と交流する機会がありました。
インターン期間中、影響を受けたことは?
自分の言葉で地域や社会を語っているスタッフの方々の姿に影響を受けました。企業訪問時、社会課題やその解決策について当事者意識を持って熱を込めて語り、質問に対して具体的なデータやエピソードを引用しながらいきいきと的確に答える様子は、鮮明に覚えています。地域の実情を把握し、信頼関係を築きながら活動を企画するローカル人材こそが、グローバル課題を解決するチェンジメーカーなのだと実感しました。“Think globally, act locally.”の姿勢は、今でも自分の理想像です。
インターン中に感じた課題は?
学生の立場でNPO運営にも参画し、内外両面を見る中で、組織力・発信力といった点で団体や業界の弱さも感じました。一方でインターンを通じて、学校・企業・団体などの協力者の方々とも数多く接し、長い年月をかけて培ってきた深い信頼関係は大きな強みであり、一朝一夕では築けない信頼構築の重要性も理解しました。現在は代表理事という立場で、団体の組織力・発信力を向上すべく試行錯誤しながら取り組んでいます。
「CSOラーニング制度」が
キャリアの起点に
インターン後のキャリアへの影響は?
大袈裟ではなく、「CSOラーニング制度」がなければ今の自分はありません。私がソーシャルセクターに関わり、環境教育を仕事にするきっかけとなった、まさに“人生のターニングポイント”です。まだぼんやりとしていた「環境教育に関わりたい」という思いが、この制度を通じて具体的なものとなり、結果的に派遣先だったSEANへそのまま就職しました。私にとって“CSOラーニング制度への応募が、最初で最後の就職活動”になっていますし、自分のキャリアの可能性を広げ、解像度を高めてくれたことを、とても感謝しています。
「木を植える人」としての実感を得ることは?
後輩のCSOラーニング生のみなさんにバトンをつないでいくことが、次の「木を植える人」への種蒔きとなり、自分にできる恩返し、持続可能な未来を切り拓くことにつながっていくと実感しています。現在は「CSOラーニング制度」受入団体の担当者として、毎年大学生・大学院生のみなさんと活動しており、自分を今のキャリアに導いてくれたこの制度に関わり続けられていることをとても嬉しく思っています。
現在の仕事で役立っていることは?
インターン中に得た知識やスキルはもちろんですが、活動を通じて得られた多様な人とのつながりが何にも代えがたい財産になっています。環境分野で活動していると、本当に多くの「CSOラーニング制度」出身の修了生が活躍していて、CSOラーニング生だったことが“2枚目の名刺”としていろいろな場面で役立っています。また、就職するとどうしても業界内での交流が増えてしまいがちですが、“学生時代に環境分野へ関心を持ち、現在は別分野で活躍している”という程良い距離感の仲間が幅広い分野にいることは、公私ともにありがたく心強い存在です。
代表理事への就任、「新宿の団体」から地域を超えた活動へ
代表理事としての思いは?
先輩方が育ててきた活動を絶やさず、更に発展させるために、30歳で代表理事に就任しました。
私はインターンシップの中で“ソーシャルセクターの存在意義やポテンシャル”を実感すると同時に、“持続可能な社会づくりを志向する団体・業界自体の持続可能性”について課題意識を持つようになりました。団体や業界を牽引してきたカリスマ的リーダーの方々の存在は非常に大きく、世代交代や事業継承は難しい課題です。若い世代のスタッフが安心して希望を持って働きたいと思える環境を整え、ソーシャルセクターが若い世代にとって魅力的なキャリアとしての選択肢の一つになる未来を目指し、前向きに取り組んでいます。
今後の取り組みは?
“新宿の団体から新宿発祥の団体へ”を合言葉に、活動エリアを広げています。新宿区外での活動として、2021年からは武蔵野市の環境啓発施設「むさしのエコreゾート」での環境教育事業を受託しました。また、自身の「CSOラーニング制度」での経験を踏まえてユースとの連携・協働には特に注力しており、ユース世代の思いやアイデアを施設の企画やイベントなどにつなげる「むさしのYouthエコプランナー」事業のコーディネートにも取り組んでいます。これからも環境教育を通じて様々な世代や立場の方々と関わり合いながら、地域や団体はもちろん、自分自身も成長し続けていきたいと思っています。
これからCSOラーニング制度に参加する方へのアドバイスは?
「CSOラーニング制度」を通じて広がる人のつながりを、ぜひ大切にして欲しいです。派遣先のスタッフの方々はもちろん、制度の仲間たちと年代や地区の枠を越えてどんどんつながってもらえたらと思います。大学も専攻も違う、でもソーシャルな意識や関心でつながっている「CSOラーニング制度」の仲間は、社会人としての“肩書き”が付く前に出会える同志のコミュニティとして、とても価値のあるものです。とにかくこの制度を楽しんで、活用し尽くしてください!
団体概要
NPO法人新宿環境活動ネット
“学びでつなぎ、未来をつくる”をタグラインに、出前授業やワークショップなどの学び合いの場のコーディネートを通じて次世代人材育成や持続可能な地域づくりを目指す、都市型環境教育を推進する新宿発祥のNPO。
環境講師人材ネットワーク「環境学習応援団」に登録する約70団体とのパートナーシップで、「エコギャラリー新宿」(東京都新宿区)や「むさしのエコreゾート」(東京都武蔵野市)をはじめとする社会教育施設や都市公園などをフィールドに、当該地域の強みや特徴を活かしたプログラムを企画・実施している。
略歴
飯田 貴也(いいだ たかや)
NPO法人新宿環境活動ネット 代表理事
大学・大学院で「環境教育」「ESD(持続可能な開発のための教育)」「ワークショップデザイン」を学び、2012年度のCSOラーニング生として新宿環境活動ネット(SEAN)で長期インターンシップを経験。卒業後にそのまま就職し、2021年から代表理事に就任。
現在は小・中学校をはじめ、社会教育施設や都市公園等をフィールドに、環境やサステナビリティをテーマにした出前授業や市民講座、ワークショップ、イベント等を年間80件ほどコーディネート。持続可能な未来を担う人材育成や地域づくりに関わりながら、環境教育をライフワークにすべく日々挑戦中。
「環境教育等推進専門家会議」委員(環境省)、「日中韓環境教育ネットワーク 国内委員会」委員(環境省)、「ESD活動支援企画運営委員会」委員(環境省・文部科学省)、「GEOC運営委員会」委員(環境省・国際連合大学)、「日本環境教育学会」理事・企画委員長など。