昨今、異常気象が原因と言われるような被害が各地でしばしば発生していますが、そもそも異常気象とは何でしょうか。気象庁の定義では「ある場所(地域)で30年に1回程度発生する現象」とされていますが、その意味する所は「人間が一生の間に1回経験するかしないかの現象」と考えてもいいのではないかと私は思っています。
ただ確率的にはこのような表現になるのですが、その発生件数はというと、年に約50件と言われており、このイメージで捉えるとあまり油断はできないようです。世界的には、損害保険として史上最大の支払額となったアメリカのハリケーン「カトリーナ」が記憶に新しい所ですが、それ以外にもアジア・ヨーロッパ各国でたくさんの洪水が発生しています。
また日本でも、過去30年間の降水量を10年ごとの平均値で見た場合、僅かずつ上昇している傾向があります。最近では2004年に10個の台風が日本に上陸しました。これまで上陸する台風の数は年平均2.6個と言われていますので、正にこの年は異常な上陸回数でしたが、これにより風水災害による保険金の支払額も、2004年度は史上最高の7274億円に及びました。因みに、台風で屋根が飛んだ等の被害があった場合、その支払いは火災保険の対象になる訳ですが、ここ数年の支払内訳を平均すると、火災で支払う金額と台風で支払う金額が大体半々位になってきており、こういった自然災害に対する備えが益々重要になってきています。
ところでこのような自然災害、或いは戦争なども含めて、企業はどんなリスクが発生してもマネジメントを継続していかなければなりません。そのために昨今注目されている考え方が「BCM(事業継続マネジメント)」です。これは、災害や事故によって被害を受けても重要業務を中断させない、もしくは中断しても可能な限り短期間で再開させるという事業継続追求の取組みです。
まだ一部の企業が始めたばかりという段階ですが、今までの災害対策とどう違うのかというと、これまでの防災・安全対策(例えば防火対策・耐震補強・人命対策など)をベースにしつつ、これに加えて、継続すべき重要業務の選定、最大損失の想定、復旧へのボトルネックの抽出、目標復旧時間の設定などを対策に組込んでいるかという点です。
アンケートを実施した所、BCMに取組んでいると回答した企業は10%位という現状ですが、昨今殆どの企業が通常の災害対策には取組んでいる訳ですから、その部分でBCMの7〜8割には既に対応しているものと理解していいと思います。残りの2〜3割、つまり今ご説明したこれまでの防災・安全対策との違いの部分にキチンと対応すれば、BCMをやっていると胸を張って構わないのではないでしょうか。
このBCMは、欧米企業では以前から経営管理手法として採用されている概念で、特に2001年のアメリカ同時多発テロ事件以来、世界的企業の多くがその取組みを強化している一方、日本政府もガイドラインを作成しその推進に努めています。
地震国家、台風国家である日本の企業が、欧米並みの国際競争力を持って事業を進めるためには、これからぜひ取り入れていかなければならない考え方なのではないでしょうか。
構成・文:宮崎伸勝/写真:黒須一彦(エコロジーオンライン)
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