講座レポート



パート1・第2回



杉本恵子の食材5色バランス健康法



2006年08月08日


杉本 恵子氏 【(株)ヘルシーピット 代表取締役/管理栄養士】


今、私の会社では高齢者の介護サービスを行なっています。平均年齢は85歳ですが、その方々の話を聞くと「昔はいいものを食べていたんだなぁ」ということを感じます。野菜、米、卵、鶏肉などは全て自分の家で穫っていた所が多く、その頃の日本の食環境は豊かだったと言うことができると思います。当時の食事とは贅沢なものではありませんでした。しかし、そういう食生活を送ってきた方々が今の社会で80〜90歳まで生きている訳です。

ところで、私達は1日3回の食事をしているとして1年間に1095回の食事をしています。その量を合計すると、なんと1トンもの食材が体の中に入っているのですが、この1トンが脂っこい・塩辛い・甘いものが多いなどの偏りを持っていると、やがて生活習慣病へと繋がっていくことになります。 その一番大きな問題は、「食べるものに対する意識」だと私は考えています。意識されていない食事は「エサ」と言い換えてもいいかもしれません。昔の牛は草原で放し飼いされて、食べたいものを選んで食べていました。しかしある時から牛は檻に入れられ、肉骨粉というエサを食べるだけになりBSEの発症へと繋がっていきました。人間もエサのような食事を続けていたら、生活習慣病に襲われるのは当然のことなのです。

そこでどうするかですが、「自分は何を食べたのか」を意識する食生活を送って欲しいと思います。その際の意識の仕方としてお勧めしたいのが、目の前にある食材に「赤・白・黄・緑・黒」の五色があるかどうかを確認する方法です。この「五色」とは、特定の栄養素との関連を示すものではありません。ただ見た目で五色を揃えて頂ければいいというものです。実際私自身、この五色をキチンと摂るということを続けているだけですが、風邪もひかないし、花粉症にもならずに生きています。こうすると1095回=1トンの食事が、体に優しい良いものに変わっていくのです。

では、この五色の食材例をご紹介しましょう。

 [赤] 牛肉・豚肉・鶏肉・マグロ・アジ・削り節・人参・トマト・イチゴ
 [白] ご飯・パン・うどん・豆腐・牛乳・卵白・大根・白菜
 [黄] 卵黄・納豆・みそ・油揚げ・チーズ・みかん・レモン・かぼちゃ・さつま芋
 [緑] ほうれん草・小松菜・ニラ・ピーマン・プロッコリー・パセリ・大葉・キウイ
 [黒] 黒ごま・ワカメ・昆布・のり・しいたけ・しめじ・黒豆・きくらげ・もずく

これを見て気がつかれる方もいるかも知れませんが、実は欧米人は黒の食材を殆ど食べません。つまり、黒を入れようと思ったら和食にシフトせざるを得ないのです。それが、私達の体に適したバランスを作り出していると言えます。今、環境問題にも同じ事が言えるのですが、戦争以後文化を失ってしまったこの国にとって、自分達の生活を「和」に戻すということはとても重要です。

その昔、日本人は食事の買い物に行くのでも、ビニール袋に入れて持って帰ってくるのではなく、買い物かごに入れて買い物をしていました。食事と同様に、文化を取り戻すためには一人一人が「和」の意識を持つ。この「意識」こそが、私達にとってより優しい生活の土台となることを理解して暮らしていくべきなのではないでしょうか。

構成・文:宮崎伸勝/写真:黒須一彦(エコロジーオンライン)