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講師紹介 一瀬 寿幸 氏 |
1.オゾン層破壊の現状と今後の見通し
オゾン層破壊のメカニズムは、例えば、大気中へ放出され上空に達したCFCが光化学反応で分解し、生じた塩素原子がオゾン分子と反応して一酸化塩素を作り、オゾン層を壊す、というものである。
オゾン層におけるオゾンの量が1%減少すると、地上に降り注ぐ有害紫外線(UV−B)の量は1.5%増えるとされている。
この(UV−B)の増加により、皮膚がんや白内障の増加、免疫抑制等の人の健康への影響のほか、動植物の生育阻害等の生態系への影響が懸念される。
例えば、オゾンの量が1%減少すると、皮膚がんの発症は2%増加し、白内障の発症は0.6〜0.8%増加すると報告されている。
オゾン層の破壊は、熱帯域を除き、ほぼ全地球的に進行しており、特に高緯度地域ではオゾンの減少率が高くなっている。
1985年に英国のファーマンらによって南極上空のオゾンホールについて報告されて以来、毎年9〜11月頃に南極上空でオゾンホールが観測されており、特に1998年には、過去最大規模のオゾンホールが出現している。
【主なオゾン層破壊物質】
名称 | オゾン破壊係数 | 地球温暖化係数 | 主な用途 |
---|---|---|---|
CFC (クロロフルオロカーボン) |
0.6〜1.0 | 4000〜9300 | 電気冷蔵庫、カーエアコン、業務用冷凍機、ポリウレタン発泡剤、部品の洗浄剤 |
ハロン | 3.0〜10.0 | 5600 | 消火剤 |
四塩化炭素 | 1.1 | 1400 | 一般溶剤、研究開発用 |
1.1.1-トリクロロエタン | 0.1 | 110 | 部品の洗浄剤 |
HCFC (ハイドロクロロフルオロカーボン) |
0.01〜0.552 | 93〜2000 | ルームエアコン、業務用冷凍機、発泡剤 |
臭化メチル | 0.6 | − | 土壌の殺菌、殺虫剤 |
(参考)HFC (ハイドロフルオロカーボン) ※ HFCは代替フロンの一種でオゾン層破壊物質ではない。 |
0 | 140〜11700 | 電気冷蔵庫、カーエアコン業務用冷凍機、発泡剤 |
※オゾン破壊係数が大きいほど、オゾン層は破壊される。
こうしたオゾン層破壊物質は、どんなところで使われているか(主なもの)
Aオゾン全量の長期的傾向については、低緯度を除いた地域で減少傾向にあり、高緯度ほどその傾向が強い。
我が国上空でも、札幌で統計的に有意な減少傾向が確認されている。
B晴天時等の同一条件下では、オゾン全量が減少すれば有害紫外線の地上照射量が増加する関係にあることが確認されているが、我が国では、有害紫外線の地上照射量の明らかな増加傾向は見られない。
C国連環境計画(UNEP)の報告(1998年)では、すべての締約国(約170国)が1997年の改正モントリオール議定書を遵守すれば、
2.オゾン層を守るためのさまざまな取り組み
また、1995年、国連において毎年9月16日を「国際オゾン層保護デー」とすることが決議された。
これに合わせて各国ではオゾン層保護のためのさまざまな行事を行っている。
【オゾン層破壊物質の生産規制等のスケジュール】
先進国 | 開発途上国 | |
CFC | 1995年末全廃 | 2009年末全廃 |
ハロン | 1993年末全廃 | 2009年末全廃 |
四塩化炭素 | 1995年末全廃 | 2009年末全廃 |
1.1.1- トリクロロエタン | 1995年末全廃 | 2014年末全廃 |
HCFC | 2019年末全廃 | 2039年末全廃 |
HBFC | 1995年末全廃 | 1995年末全廃 |
ブロモクロロメタン | 2001年末全廃 | 2001年末全廃 |
臭化メチル | 2004年末全廃 | 2014年末全廃 |
【内容】
・ オゾン層破壊物質の製造・消費数量の規制
・ オゾン層破壊物質の使用事業者に対する排出抑制・使用合理化の努力義務
・ オゾン層の状況やCFC等の大気中濃度の観測・監視など
具体的には以下のような取り組みを行っている。
平成10年度におけるフロン回収等への取り組みの現状(環境庁・通産省共同調査結果)
フロン回収実施市町村数 | 2.620(全体の81%) |
協議会設置都道府県等の数(注) | 57(全体の97%) |
機器の種類 | 回収率 | 備考 |
家庭用冷蔵庫 うち家電販売店等ルート |
29% 5% |
台数ベースの値 |
カーエアコン | 12% | 量ベースの値 |
業務用冷凍空調機器 | 56% | 量ベースの値 |
考え方 |
CFC回収についての各省庁の取り組み |
通商産業省 | →(自動車業界等メーカー、販売業者側の)関係事業者 |
→中小企業(自動車ユーザー) | |
運輸省 | →自動車整備業者等の関係業界 |
→トラック、バス、タクシー等の関係業界 | |
→業務用冷凍空調機器としてCFCを使用する関係業界 | |
建設省 | →民間ビルの関係業界 |
農林水産省 | →食料・飲料品関係の業界 |
破壊処理 |
フォローアップ |
地域におけるフロン回収推進協議会 |
53 | → | 57 | → | 59 |
(平成9年度末) | (平成10年度末) | (平成11年8月) |
カーエアコンの関係業界 |
業務用冷凍空調機器の関係業界 |
家庭用冷蔵庫の関係業界 |
参考図書
環境庁オゾン層保護検討会編
「オゾン層を守る」
日本放送出版協会
1989年
不破敬一郎編著
「地球環境ハンドブック」
朝倉書店
1994年
松本泰子書
「南極のオゾンホールはいつ消えるのか」
実教出版
1997年
環境庁
「オゾン層等の監視結果に関する年次報告書」
1999年
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