|
はじめに |
|
地球温暖化の研究で、その影響とリスクはどこまで明らかにされているのでしょうか。地球温暖化の進行は、私たち人類社会一人一人の取り組みにかかっています。温暖化抑止のために採択された京都議定書の発効に向けてどのような取り組みがなされているのか、国際社会の動向を中心に学びます。 |
|
|
|
はじめに |
- 異常気象が頻発し、人々の懸念が強まっている。
- 地球温暖化研究が進展し、科学的な不確実性が減少しつつある。
- 技術開発と対策が進展しつつある。
- 京都議定書は118カ国と欧州共同体が批准、ロシアの批准により発効する。
- 京都議定書の次の対策はどうあるべきかについて国内外で検討が進められている。
|
|
地球温暖化研究の最前線〜影響とリスクはどこまで明らかにされているか(1) |
- 地球平均地上気温:20世紀に約0.6℃上昇。
- 将来の気候を予測する気候モデルの能力への信頼性が増してきた。
|
気候プロセスの理解とモデルへの組込が進展 |
20世紀の地上気温:モデル計算と観測は大きなスケールで一致 |
人為起源(温室効果ガスと硫酸エアロゾル)及び自然起源の因子を複合させると、過去140 年間のモデル計算と観測が最も良く一致。 |
20世紀の100年間に約0.6℃上昇 |
1990年代は過去1000年で最も暑い10年であった。 |
|
地球温暖化研究の最前線〜影響とリスクはどこまで明らかにされているか(2) |
- 近年得られたより強力な証拠:最近50年間に観測された温暖化の大部分は、人間活動に起因する温室効果ガス濃度の増加によるものだった可能性が高い。
- 干ばつ、洪水、熱波、雪崩、暴風等の極端な気象現象:21世紀にその頻度・強度が増加、死亡、健康・物的被害等の影響の強度も増加が予測される。
|
|
地球温暖化研究の最前線〜影響とリスクはどこまで明らかにされているか(3) |
- 近年の気温上昇等の地域的気候変化の影響は既に海氷や氷河の縮小、生態系の異常等に現れている。
北極海の海氷(晩夏〜初秋)の厚さ:約40%減少
氷河の縮小、永久凍土の融解
動物生息域の極方向、高々度への移動
樹木開花、昆虫出現、鳥の産卵時期の早期化
- 適応は気候変化の緩和努力を補完するために必要な戦略。
|
|
ヒマラヤの氷河の融解 |
1978年と1998年との同場所の写真を比較すると、明らかに氷河が融解し減少しているのがわかる。 |
|
ヨーロッパにおける異常高温 |
フランス:熱波による死者1万人以上 |
ポルトガル:過去100年で最悪の山火事 |
|
海面上昇の影響 |
- 海面上昇は沿岸域の7500万人〜2億人に影響する。
- 日本でも海面上昇で砂浜、干潟が減少し、低地に住む人々の安全性が脅かされる。
65センチの海面上昇で、砂浜の8割以上が侵食。
1メートルの海面上昇で、平均満潮位以下の土地、人口、資産がでてくる。
|
|
地球温暖化研究の最前線〜影響とリスクはどこまで明らかにされているか(4) |
- 気候変化に対する脆弱性:地域間、地域内で顕著に異なる。
殆どの開発途上地域は適応力が低く特に脆弱
洪水、干ばつ、穀物生産への影響:多くの途上地域
海面上昇、暴風雨の増加:小島嶼(しょ)国(こく)、低地沿岸域
- 影響の総合的な評価
気候変化による悪影響のリスク:気温上昇が大きくなるほど増大
今後100年間の気温上昇が2℃でも、脆弱な自然・産業等へのリスクや異常気象によるリスクが高まり、一部地域に悪影響が生ずる
|
|
地球温暖化は将来どの程度進行するか? |
- 将来世界の経済・社会像(発展方向や人々の価値観)により大きく左右される。
- IPCCの排出シナリオ(6グループ)
A1:高度経済成長、新技術等急速導入
A1FI:化石エネルギー源重視
A1T:非化石エネルギー源重視
A1B:すべてのエネルギー源のバランス重視
A2:地域ごとの多元的発展
B1:持続可能な発展に重点
B2:緩やかな経済成長、地域多様化
|
|
技術開発と対策の進展 |
- 温室効果ガス排出削減技術は顕著に進展。
風力発電、効率的ハイブリッド車、燃料電池、二酸化炭素の地下貯留等
- 排出削減ポテンシャルは大きい。
正味直接コスト$100/tC以下で2020年までに世界の排出量を2000年の水準以下に削減できる可能性がある
- 我が国:自動車・家電にトップランナー省エネ基準を適用、これに対応した製品の市場導入が進展。
グリーン税制で低公害車普及が加速
- 地域協議会温暖化対策モデル事業等を通じた地域特性に応じたエコライフ推進。
|
|
国際交渉の経緯(京都議定書以後) |
COP3(97年2月、京都) 京都議定書の採択 |
COP6(00年11月、ハーグ) 合意不成立、会議中断 |
COP6再開会合(01年7月、ボン)議定書の中核要素につき基本合意(ボン合意) |
COP7(01年10月/11月、マラケシュ)運用ルールの法文書に合意(マラケシュ合意) |
COP8(02年10月、ニューデリー)デリー宣言の採択 |
|
マラケシュ合意(COP7)の概要(1) |
- 京都メカニズム(KM:排出量取引、JI、CDM)
利用は国内対策に対し補足的(量的制限なし)。
CDM、JI等で得た排出枠は自由に取引できる。
原子力によるJI、CDMクレジットの利用は控える。
排出枠の90%又は直近の排出量の低い方を確保(排出量取引における売りすぎ防止)。
- 吸収源
森林管理の吸収分は各国別に上限設定(我が国は基準年排出量の3.9%分に相当する年間
13百万炭素トン)。
CDMの対象活動は植林、再植林のみ。
- 遵守制度
目標を達成できない場合、超過分の1.3倍を次期約束期間の割当量から差し引く。
不遵守の際に講じられる措置に法的拘束力を持たせるか否かは第1回議定書締約国会合で決定。
- 途上国問題
途上国の能力育成、技術移転、対策強化等を支援するための基金を設置。
途上国の将来の約束に関する検討については、協議未了・先送り。
|
|
日本の京都議定書の締結 |
- 2001年
4月 「京都議定書発効のための国際合意の実現に関する決議」を衆・参議院とも全会一致で採択
- 2002年
3月19日 地球温暖化対策推進大綱(新大綱)の策定
3月29日 地球温暖化対策推進法の改正法案
京都議定書の締結承認案件の国会提出
- 2002年
5月31日 京都議定書の締結の国会承認
6月4日 京都議定書を締結
地球温暖化対策推進法の改正法の国会成立
(6月7日公布)
|
|
わが国の温室効果ガス排出量の推移 |
2001年度は12億9900万トンCO2.基準年比約5.2%増。 |
→6%削減約束達成には、2001年度から約11%相当分の排出量を削減しなくてはならない。 |
|
京都議定書の発効・実施に向けて |
- 京都議定書京都議定書は以下の2条件を満たした後、90日後に発効。
(1)55カ国以上が締結
(2) 締結した付属書T国の1990年CO2排出量が全付属書T国の合計排出量の55%以上
- 2003年10月現在118カ国と欧州共同体が締結。締結した付属書T国の排出量は44.2%。
ロシアの締結により上記Aの要件を満たし、議定書は発効。
|
|
京都議定書実施の動向 |
- 条約締約国会議(COP)
CDMの具体化、実施体制整備:CDM理事会
ベースライン・モニタリング計画作成の方法論審査、一部承認
運営組織(OE)の信認に向け審査が進展
- EU
排出量取引指令、7月欧州理事会で承認
加盟各国の主要排出源に排出上限を設定
排出量取引は2005年より開始、2004年新規加盟10カ国も参加
京都議定書のJI/CDMクレジットの活用は、欧州委の指令案が承認されることを条件に、認められる見込み
|
|
米国の動向(1) |
- 連邦政府の取り組み
独自のGDP当たり排出量削減目標を設定、産業界の自主的取組、企業の排出量報告指針作成、科学研究・観測の推進、技術の開発・導入支援。
- 州政府の取り組み
ニューヨーク州等北東部10州:発電所CO2排出量に上限設定・排出量取引の導入を目指すことで合意。
カリフォルニア州:自動車CO2排出量規制法制定。
少なくとも半数の州で温室効果ガス排出規制、再生可能エネルギー利用拡大などの取り組み。
|
|
米国の動向(2) |
- 民間の取り組み
シカゴ気候取引所:参加企業等による自主的な排出上限設定・排出量取引。
企業と連邦政府や環境NGO の連携による自主的排出削減。
- 連邦議会の取り組み
上院は10月末本格的な温暖化対策法案(マケイン=リーバーマン法案:排出源に上限義務付け・排出量取引導入)を初めて審議、採決。否決だったが僅差(賛成43、反対55)。マケイン議員は来年法案を再提出する旨表明。
- マケイン=リーバーマン法案の投票結果分布
|
|
発展途上国における取り組み |
- 条約に基づく国別報告書の作成、提出
排出・吸収インベントリー作成
気候変動の悪影響への脆弱性評価、適応対策
- 省エネ推進、再生可能エネルギー利用拡大
工場省エネ推進、自動車燃費向上対策
天然ガス導入、CNG自動車普及、風力、バイオマス導入
- クリーン開発メカニズム事業実施推進体制整備
- 能力構築
政府機関、科学者、専門家の能力育成
|
|
京都議定書の次のステップ(1) |
- 京都議定京都議定書は条約の究極目的達成に向けての第一歩。2013年以降更なる取組が必要。
気候変動枠組条約の究極目的:気候系に対する危険な人為的影響を防止する水準で大気中温室効果ガス濃度を安定化させること
- 次のステップに関する検討が始まっている。
非公式対話:7月日本・ブラジル共同議長の下実施
国内外で、政府機関、国際機関、シンクタンク等による検討が活発化しつつある
我が国:中央環境審議会、産業構造審議会 |
|
京都議定書の次のステップ(2) |
- 京都議定書気候変動枠組条約の究極目的達成に向けた絶え間ない前進。
- 米国や途上国も含む地球規模の参加。
- 共通だが差異ある責任原則の下での衡平性の確保。
- これまでの国際合意に立脚しつつ、究極目的達成や地球規模の参加の観点から、条約や京都議定書の仕組を発展・改善。
|
|
京都議定書の次のステップ(3) |
- 京都議定書次期国際枠組みの交渉プロセスへの企業やNGO等利害関係者の意味ある参加、合意形成への貢献。
- 環境と経済の好循環を目指した構造改革。
- 重要な役割を果たす技術の開発・普及、市場がそのためのインセンティブを与えるよう経済社会システムを改革。
|
|
京都議定書の次のステップ(4) |
- 信頼醸成が対話から交渉へのステップアップの前提。
京都議定書の発効、約束達成に向けた前進
途上国の取組支援(資金、技術移転、能力育成)
クリーン開発メカニズム事業形成
- 米国との対話と協力の積み重ね。
日米気候変動ハイレベル協議
炭素隔離、水素経済、地球観測等に関する多国間協力
|
|
|
|
|
|